今週の相場の空気
今週の結論:株は最高値・暗号資産は恐怖。“全面安”ではなく「選別」の週
今週の暗号資産市場は、はっきりとした逆風(リスクオフ=値動きの荒い資産を避け、現金など安全なほうへお金が逃げる動き)でした。ビットコインは1週間で約-12%下げ、節目の$70Kを割って一時$62K台へ。投資家の気分を測る「心理指数」(0〜100で、低いほど不安)も34から、より深い“恐怖”の21へ後退しました。
特徴的なのは、米国株が史上最高値を更新するすぐ隣で、暗号資産だけが沈んだことです。本来は一緒に動くはずの2つが逆を向く——これを乖離(かいり/デカップリング)と呼びます。ただし“なんでも下がる全面安”ではありません。市場全体からお金が抜けるなかでも、自前の好材料を持つ一部の銘柄にだけ、選ぶようにお金が集まりました。曇り空の町でも、一部にだけ日が差していた、そんな一週間です。
数のうえでも逆風(4)が追い風(3)を上回りました。しかも逆風はどれも金利・ドル・株式相場という市場全体に効くもの。だから上の指標はそろって下落しました。まずは数字で全体像を見ます。
マーケット早見表
暗号資産・株式・為替を、ひとつの表で見渡します。「今週」だけでなく「年初来(今年に入ってから)」も並べました。
| 指標 | 直近値 | 今週 | 年初来 |
|---|---|---|---|
| ビットコイン(BTC) | $64,064 | ▼12.3% | ▼39.3% |
| イーサリアム(ETH) | $1,796 | ▼9.3% | ▼40.2% |
| 日経225(日本株) | 68,402 | +5.2% | +35.9% |
| S&P500(米国・主要500社) | 7,554 | +0.4% | +10.3% |
| ドル円(円相場) | ¥159.9 | +0.3%円安 | +2.0%円安 |
いちばん大事なのは右はしの「年初来」(=今年の初めからの増減)です。日本株(+35.9%)も米国株(S&P500+10.3%)も今年は大きく上昇。いっぽう暗号資産は今年マイナス(BTC▼39.3%/ETH▼40.2%)。つまり2026年はここまで「株は強く、暗号資産は下落」という流れが続き、今週はその差がさらに広がりました。
ナスダック・NYダウはフル版に掲載しています。/出所:株価指数・為替=FRED(6/3終値)、暗号資産=CoinMarketCap(6/4時点)。年初来は昨年末との比較です。
世界経済と規制の動き
なぜ逆風になったのか。今週の地合いを決めた、外側の3つの動きです。
動き① 逆風の本体は「金利」
相場を一番押し下げたのは金利です。月末に出た物価の指標(PCE=米国の物価の温度計)が予想より高く、「利下げはお預け」との見方が強まりました。利息も配当も生まない暗号資産は、こういうとき敬遠されます。実際、暗号資産に投資する投資信託(ETF=証券口座から株のように買える商品)から11営業日続けてお金が抜け、合計約34.5億ドル=上場以来で最も長い連続流出となりました。さらに、最も多くビットコインを買い続けてきた米企業ストラテジーが約4年ぶりに売却。「一番の買い手が売りに回った」ことが、不安をいっそう深めました。
動き② 株とクリプトが「逆を向いた」
今週いちばんの特徴がこれです。米国株の不安を測るVIX(恐怖指数)は落ち着き、S&P500もナスダックも史上最高値を更新しました。つまり株式市場はリスクを取りに行っていたのです。にもかかわらず暗号資産だけが売られました。理由はお金の行き先。利下げが遠のき、投資家は値動きの読みにくい暗号資産より、値上がりが続くAI(人工知能)関連の米国株へ資金を集めたからです。同じ「リスク資産」のなかで株に資金が集まり、暗号資産から抜けた——これが乖離の正体です。
動き③ 中東の緊張と原油高という追い打ち
金融政策に加え、地政学リスクも重なりました。6月初めに米国とイランの攻撃が再燃し、原油価格は1週間で+5%上昇。原油高はインフレを再燃させ、利下げをさらに遠ざけます。不安が高まる局面ではお金は金(きん)など安全資産へ向かいやすく、これも値動きの荒い暗号資産には逆風でした。金利・株・原油という3つの逆風が同じ週に重なり、下げを深くしました。
それでもお金は無差別に逃げたわけではなく、限られた資金が特定の分野へ向かいました。その行き先を見ます。
今週、お金が向かった分野
全面安のなかでも、大手の資金とお墨付きがはっきり集まった分野があります。今週の主役を中心に見ます。
RWA=株や国債といった「現実のお金まわりの資産」を、改ざんしにくい共有の台帳(ブロックチェーン)の上で扱えるようにする分野です。今週ここで歴史的な出来事がありました。米国の証券決済を一手に担う最大手 DTCC が、保管する証券をブロックチェーンの一つ「Stellar(ステラ)」に載せる計画を発表。国の中枢インフラが、数あるブロックチェーンの中から実用基盤を名指ししたのは史上初めてで、このあとの中心銘柄に直結します。
先週(5/28号)の中心は「オンチェーン取引所・DeFi・予測市場」でしたが、今週は大手の金融機関が特定の銘柄を本格採用する流れが前面に出ました。その象徴が XLM。ただし Stellar(XLM)はもともと国際送金・ステーブルコインなど"決済"に強い銘柄で、RWA(現実資産のトークン化)の代表格ではありません。今週は、その決済畑の Stellar が米決済最大手 DTCC から"証券をブロックチェーン化する実用基盤"として選ばれた点が新しさでした。オンチェーン取引所(HYPE)も2週連続で資金を集め(継続)、お金の中心が"取引所の賑わい"から"機関による本格採用"へ一段進みました。
※合成ドル(ENA)や金融特化チェーン(INJ)など、ほかの選別分野はフル版に。今週の教訓は「誰が言ったか」より「どこにお金が向かったか」。話題が先行したAI系や、取引の中身を見えにくくする技術の銘柄(プライバシー系)は、価格が追いつきませんでした。
個別銘柄(主役を1つ)
今週とりあげるのは6銘柄。市場全体が恐怖に沈むなか、もっとも自信を持って注目(Good)としたのは1つ=XLM(ステラ)です。ここでは主役だけくわしく、残り5つは一言ずつ。くわしい理由と注意点はフル版にまとめています。
Stellar
XLM ・ 機関の証券決済(RWA) Good国の証券インフラが、史上初めて公開ブロックチェーンに選んだ一銘柄。
04で紹介した「機関の証券決済」の中心が、このステラ(XLM)です。米国の証券決済を一手に担う最大手 DTCC が、保管する米国株500銘柄やETF・米国債を2027年前半にステラ上で扱えるようにすると発表しました。国の中枢インフラが実用基盤としてステラを名指ししたのは初めてで、株でいえば、決済を担う巨大機関が「この仕組みを採用する」と公表した段階の動きです。ビットコインが全面安となるなかでXLMは+18.3%と逆行高。話題の大きさと、落ち着いて評価できる確信度は別物だと考え、過熱ぎみのHYPEではなく、数年単位で効く構造的な材料を持つXLMをGoodに絞りました。ただし「だから今すぐ買い」ではありません。実装は2027年前半の計画段階で遅れる余地があり、一部報道の「114兆ドル」はDTCCの年間決済総額であってステラへの流入額ではない誇張表現。本日はすでに-9.4%と、材料を織り込む調整も出ています。
残り5銘柄(いずれも今週は「注目」=材料はあるが、慎重に見たい)