TSUDOI

WEEKLY INTELLIGENCE 暗号資産ウィークリーレポート

Vol.202619 | 2026年5月7日 | 対象: 5/1〜5/7 | 読了目安: 14分
暗号資産 時価総額約 424 兆円$2.69T ← 前週 $2.50T▲ +7.6% /7日
投資家心理指数50 / 100中立 ← 前週 31(+19pt)0-19 極度の恐怖20-39 恐怖40-59 中立60-79 強欲80-100 極度の強欲
ビットコイン約 1,282 万円$81,247 ← 前週 $76,330▲ +6.44% /7日
イーサリアム約 37 万円$2,333 ← 前週 $2,274▲ +2.60% /7日
総合判定: Mixed → Risk-On 移行中(マクロ標準)
今週の注目: 6銘柄 / Good 2(TON, SOL)
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📑 目次

目次

  1. 1. 今週の相場の空気
  2. 2. 世界経済と規制の動き
  3. 3. 今週のニュース
  4. 4. 主要指標の動き
  5. 5. どの分野にお金が向かったか
  6. 6. 注目銘柄
  7. 7. マーケットカレンダー
  8. 8. 編集部の視点
  9. 参考資料

このレポートの読み方

上流(世の中のニュース)から下流(暗号資産の価格や資金の動き)へと、3 つのステップでご案内します。

📰 ステップ 1: 何が起きたか
  • 1. 今週の相場の空気
  • 2. 世界経済と規制の動き
  • 3. 今週のニュース
📊 ステップ 2: どう動いたか
  • 4. 主要指標の動き
  • 5. どの分野にお金が向かったか
🎯 ステップ 3: どの銘柄か
  • 6. 注目銘柄
  • 7. マーケットカレンダー
  • 8. 編集部の視点

今週のストーリーは「価格はマクロに振られたが、構造はむしろ前進した — ETF・規制・機関採用レールの三方面で同時進行」という一本の線でつながっています。

01

今週の相場の空気

まずは今週の市場を一言で表すと何だったのか、全体像から掴んでいきます。

価格はマクロに振られたが、構造はむしろ前進した週

今週は前半と後半で性格がきれいに分かれる「綱引き」の週でした。週前半は 4/29 FOMC(米国の金利を決める会合)の据え置きと、声明文に中東不確実性とエネルギー高インフレが明記されたこと、4/30 日銀の据え置き、5/3 のミネアポリス連銀総裁による「イラン-米国情勢の長期化はインフレと景気の双方を傷める」発言が重なり、市場は higher for longer(高金利長期化)の警戒モードに入りました。それが5/6 に米イラン停戦覚書接近の報道で原油急落・株高に反転し、後半だけ一時的なリスクオンに切り替わるという展開です。停戦は確定でなく、覚書期待を市場が先食いしている段階で、核問題と海上交通の核心論点は 5/6 時点で未解決のままでした。

価格はマクロの綱引きに振られましたが、構造の方は静かに前進しました。BTC は 80,000 ドルを回復し、米国現物 BTC ETF へは 5/1〜5/7 で 16.5 億ドルの純流入、4 日連続の流入記録を更新。ETH ETF も 5/4 単日で 7.37 億ドルの純流入を記録して 5 月の流れを反転させました。並行して欧州金融機関のステーブルコイン準備が動き出し、Solana 上では Anchorage と JP モルガン、Google Pay.sh、Western Union の USDPT 採用が同日に発表されるという「機関採用レール」の集中日が生まれました。米議会では CLARITY 法案の Section 404 妥協案が最終化し、5/11 週の委員会審議入りが期待される段階に到達しています。

今週の相場を動かした 8 つの材料

今週、市場に影響を与えた主な出来事を「追い風(価格上昇につながる材料)」「中立」「逆風(価格下落につながる材料)」の 3 段階に分類しました。追い風 5 対 逆風 2 で、構造前進が地合いを支えた週です。

5
追い風
1
中立
2
逆風
● 追い風(5)
  • 1.BTC 現物 ETF が 4 日連続流入、+16.5 億ドル(5/1-5/5)
  • 2.ETH ETF が 5/4 単日 +7.37 億ドルで月初の流出から大反転
  • 3.CLARITY 法案 Section 404 妥協案が超党派で最終化(5/5)
  • 4.Solana で機関採用 3 件同日発表(5/5、Anchorage×JPM / Google Pay.sh / Western Union USDPT)
  • 5.5/6 米イラン停戦覚書接近報道で原油急落・株高、暗号資産も連れ高
● 中立(1)
  • 6.日銀 4/30 政策金利据え置き、リスクシナリオで原油・円安の物価上振れに言及
● 逆風(2)
  • 7.4/29 FOMC 据え置き、声明にエネルギー高インフレ・中東不確実性を明記
  • 8.5/3 ミネアポリス連銀総裁「イラン-米国情勢の長期化はインフレと景気の双方を傷める」発言
02

世界経済と規制の動き

暗号資産の外側で起きた「政治と金融政策の動き」が、今週の相場の地合いをどう左右したのか。次章の個別ニュースを読む前に、大きな空気感をつかむ章です。

2026年5月7日週次レポートのマクロ情報グラフィックレコード
マクロ情報:高金利警戒と停戦期待、ETF流入の関係を1枚で整理

中東情勢 — 前半「higher for longer 警戒」、後半「停戦覚書接近報道で risk-on 反転」

今週の中東情勢は、前半と後半で景色が一変しました。前半は4/29 FOMC が中東不確実性とエネルギー高インフレを声明文に明記、5/3 にはミネアポリス連銀総裁が「イラン-米国情勢の長期化はインフレと景気の双方を傷める」と踏み込み、原油 Brent は一時 110 ドルを超えていました。流れが変わったのは 5/6 で、米イラン停戦覚書接近の報道で原油が急落、株が上昇、暗号資産も連れ高となりました。ただし停戦は確定でなく覚書接近の段階で、核問題と海上交通の核心論点は 5/6 時点で未解決のままです。覚書期待を市場が先食いしている性格が強く、構造の強気(ETF 流入、欧州金融機関の参入)と短期過熱(覚書期待先食い、ショート清算 11,793 人)が同時進行した週、と整理できます。

米国金融政策 — Powell 議長 5/15 退任、Warsh 体制移行へ。次の節目は 5/9 米CPI

4/29 の FOMC(米国の金利を決める会合)は政策金利を据え置き、声明文に「最近の世界的なエネルギー価格上昇」と「中東情勢による高い不確実性」を明記しました。日銀も 4/30 の決定会合で金利を据え置きつつ、リスクシナリオで「原油高と円安が同時進行すれば物価が上振れる」と明示し、緩和のフリーハンドは持たないと示唆しました。次の判断材料は 2 つあります。第一に、Powell(パウエル)議長の任期が 5/15 で終了し、Warsh(ウォーシュ)体制へ移行します。Warsh 氏は Powell より「インフレ警戒寄り」と見られており、初の発言タイミングで市場が金利見通しを織り直す可能性があります。第二に、5/9 の米国消費者物価指数(CPI、物価上昇率を測る指標)が中東情勢のエネルギー価格への波及度合いを測る最初の数字になります。

機関フローは「BTC 構造買い × ETH 反転買い × SOL 商品棚拡張」の三層構造

機関フローはセグメントごとに温度差が出ました。米国現物 BTC ETF は 5/1〜5/7 で 16.5 億ドルの純流入、4 日連続の流入、ETH ETF も 5/4 単日 7.37 億ドルで月初の流出を一気に塗り替えて反転、SOL ETF も小幅ながら流入を維持しました。これに加え、欧州金融機関のステーブルコイン準備の動きが新しい資金経路として加わりつつあります。Bullish と Equiniti の連携、イタリアの銀行による SEPA(欧州統一決済)対応のトークン化試験、スペインのバンコ・サバデルが Qivalis を通じてステーブル参画を整える動きが同じ週に並びました。ETF という米国主導の経路に加えて、欧州銀行が自前のステーブル基盤を整える動きが芽吹き始めた、という見方ができます。

03

今週のニュース

暗号資産業界の中で起きた 3 つの主要な出来事を整理します。マクロ・地政学の動きについては前章「世界経済と規制の動き」に集約し、ここでは重複を避けています。

1

米 CLARITY 法案 Section 404 妥協案が超党派で最終化、ただし markup 日程は未指定(5月5日、4 週連続主軸)

5月1日、米議会で議論が続く CLARITY 法案(暗号資産の市場ルールを定める包括法案)の Section 404(保有者への利回り提供を制限する条項)について妥協案の文言が公開されました。続く5月5日、共和党 Tillis 議員と民主党 Alsobrooks 議員が「最終版」とする超党派の共同声明を発表、5月6日には Lummis 議員が「CLARITY 法案は最優先課題」と発言しました。先週は「妥協案の方向性が見えてきた段階」でしたが、今週は「文言が公開され、超党派が最終版と宣言」する段階まで進みました。

市場への影響:この条項が成立すると、Coinbase の USDC Rewards(USDC を保有しているだけで年率 3.5% の利息が支払われる仕組み)のような「保有しているだけで利息」型のモデルに圧力がかかります。Coinbase の 2025年1〜9月のステーブルコイン関連収益は約 9.85 億ドル(前年比 +44%)に達しており、ここが直接の影響を受けます。一方で、決済・送金・流動性供給など「使うことで価値が出る」モデルの企業には追い風となります。ただし注意が必要です。上院銀行委員会の公式 markup(条文確定の審議)カレンダーには 5 月の日程はまだ掲載されておらず、Tim Scott 委員長の「希望日程」段階で流動的です。

出典: CoinDesk(5/1, 5/2)、CoinGape(5/2)、銀行委員会公式スケジュール(未掲載確認)
2

BTC/ETH ETF が 5 月に大反転 — 4 営業日連続の純流入で BTC +16.5 億ドル / ETH +2.36 億ドル(5月4日、5/1号予測検証+続報)

5月1日から5日にかけて、米国の現物 BTC ETF(ビットコインを直接保有する投資信託)が4営業日連続で純流入となりました。5/1 が +6.298 億ドル、5/4 が +5.323 億ドル、5/5 が +4.673 億ドルで、合計約 +16.5 億ドル。ETH ETF はさらに劇的で、4/30 の -2,370 万ドルから 5/4 には単日 +7.37 億ドルへ大反転し、4 営業日合計で +2.36 億ドルとなりました。SOL ETF も +380 万ドルと小幅ながら流入を維持しています。先週は「4/24-30 で BTC/ETH とも純流出」でしたが、今週は「4 営業日連続で大幅流入に完全反転」しています。

市場への影響:この動きは、5/1 号で示した「5 月再反転」予測がほぼ完全に的中した形です。BTC ETF の累計運用残高(AUM)は 587.2 億ドルとなり、過去最高の 611.9 億ドルを目前に控えています。「機関投資家は短期の値動きに惑わされず、淡々と買い増し準備を続けている」という仮説の最も強い裏付けと言えます。SOL ETF の +380 万ドルは単独では小さいものの、「機関の商品棚(取扱銘柄ラインナップ)が広がった」という構造的な意味のほうが大きい点は冷静に押さえておきたいところです。

出典: CoinDesk(5/4)、Farside Investors BTC/ETH ETF 日次フロー、SoSoValue 累積残高
3

欧州金融機関でステーブル・トークン化準備が拡大 — Bullish×Equiniti、イタリア銀行 SEPA、バンコ・サバデル Qivalis(5月5日、新規)

5月5日、暗号資産取引所 Bullish(Block.one 系)が、英国の株主名簿管理大手 Equiniti を約 42 億ドルで買収すると発表しました。クリプト企業が伝統的な資本市場の事務インフラを丸ごと取り込む象徴的な案件です。同日、スペインの大手銀行バンコ・サバデルがユーロ建てステーブルコイン構想「Qivalis コンソーシアム」への参加を表明しました。前日5月4日にはイタリア中央銀行高官が、SEPA(欧州統一決済網)のトークン化を提言しています。

市場への影響:これらは個別には小さなニュースですが、合わせて読むと意味が変わります。価格の話ではなく「決済の配管」を整備する動きであり、これまで米国中心だった「DeFi の機関化テーマ」(Aave / Morpho など、4 週連続でこのレポートの主軸となっているテーマ)が、欧州にも本格的に広がり始めたことを示しています。地理的な補完が進んでいる構図です。注意点としては、いずれも「準備・表明」段階であり、実装と規制承認には時間がかかります。短期の価格材料というより、半年〜1年スパンで効いてくる構造変化として位置付けるのが妥当です。

出典: Bullish 公式リリース、Banco Sabadell 公式、Banca d'Italia(参考リサーチ)
04

主要指標の動き

これまでのニュースと世界経済の動きを受けて、市場の主な数字がどう反応したかを見ていきます。毎週同じ 6 指標を、「お金の流れ」「市場の構造」「投資家心理」の 3 つの切り口で追跡します。

米国現物 BTC ETF(5/1-5/7 累計)
+16.5 億ドル
5/1 +6.298 億・5/4 +5.323 億・5/5 +4.673 億の 4 日連続流入。AUM 587.2 億ドル、過去最高 611.9 億ドルを目前に。
米国現物 ETH ETF(5/1-5/7 累計)
+2.36 億ドル
5/4 単日で +7.37 億ドルの大反転、4/30 -2,370 万ドルから完全反転。SOL ETF も +380 万ドルで流入維持。
取引所に預けられたビットコインの量
減少傾向継続
取引所から個人・機関の保管庫へ移動する流れは継続。即時売却の準備が解かれている=中長期的に売り圧力が和らぐサイン。
ビットコインの市場シェア
60.5%(+0.5pt)
先週 60.0% → 今週 60.5%。BTC ドミナンスは高止まり、altseason(アルトコインへの資金循環局面)はまだ到来していない。
BTC 365 日 MVRV
-16.5%
市場価格と取得平均価格の比率。長期保有者の多幸感は未到来で、悲観一色ではないものの過熱でもない、選別の余地が大きい状態。
投資家心理指数(Fear & Greed)
50(中立)
先週 31(強い恐怖)→ 今週 50(中立)と +19pt 急回復。ただし強気帯(55+)への突入ではない。
05

どの分野にお金が向かったか

前章の主要指標で見たとおり、Mixed → Risk-On 移行中の地合いの中でも分野によって濃淡がはっきり出ました。6 つの分野それぞれで、どの銘柄を見ていて、どう動いたかを整理します(上段:資金が向かった 3 分野、下段:勝ち負けが分かれた 3 分野)。

2026年5月7日週次レポートのナラティブ情報グラフィックレコード
ナラティブ情報:規制、機関採用、消費者化、AIインフラの4本柱
消費者向けクリプト ↗ 銘柄: TON
今週の主役: Telegram 主導の体制移行が決定、手数料 6 倍削減、ステーキング流入 1.91 億ドル超。10 億人ユーザー基盤への送り込み体制が整う。
L1 機関採用レール ↗ 銘柄: SOL
今週の主役: 5/5 同日に Anchorage×JPM、Google Pay.sh、Western Union USDPT の 3 件発表。機関の運用レール選びが Solana に収斂。
AI×ストレージ・分散クラウド ↗ 銘柄: FIL・ICP・VVV
今週の主役: FIL Boost v2.5.2-rc1 + Glacier Drop、ICP GuestOS で Cloud Engine subnet 前進、VVV emissions cut 正式発効。
機関投資家・ETF ↗ 銘柄: BTC・ETH
今週の主役: BTC ETF +16.5 億ドル / ETH ETF +2.36 億ドル / SOL ETF +380 万ドル。BTC が構造買い、ETH が反転買い、SOL が商品棚拡張。
欧州ステーブル基盤 → 銘柄: (個別銘柄なし)
今週の主役: Bullish×Equiniti、イタリア銀行 SEPA トークン化、バンコ・サバデル Qivalis。米国ステーブル軸の地理的補完が進行中。
プライバシーセクター → 銘柄: DASH(観察)
今週の主役: +49.6%/7d の急騰。規制と地政学の不透明感を背景にプライバシートークンへの避難買いが起きた一方、上昇材料は公式情報と整合せず観察対象。

今週の資金フローの特徴

今週の資金フローは「BTC の構造買い × ETH の反転買い × SOL の商品棚拡張」という 3 層構造で読み解けます。BTC ETF +16.5 億ドル、ETH ETF +2.36 億ドル、SOL ETF +380 万ドルという規模差そのものが、機関投資家の優先順位を物語っています。CoinShares の週次資金フロー報告(4 週連続プラス)もこの流れを補強しています。一方で、BTC ドミナンスは 60.5% と高止まりしており、「BTC 偏重・アルトコインは選別相場」という構図が継続しています。5/6 には先物市場で 11,793 人のショートポジションが清算されるなど、短期のレバレッジ取引は荒く、「機関の戦略的買い × 短期裁量勢の振り回され」が同時進行している状態です。追うべきは ETF フローの方向性であり、日々の値動きではありません。

06

注目銘柄

今週は「消費者向けクリプト本流化」「L1 機関採用レール」「AI×ストレージ・分散クラウド」「プライバシーセクター回転」の 4 テーマで 6 銘柄をご紹介します。「Good」は確信度が最も高い 2 銘柄(TON・SOL)、「観察」は材料があり慎重に見る 4 銘柄(ICP・FIL・VVV・DASH)です。Good ラベルは毎週最大 2 銘柄、つけるか・つけないかの二択に簡素化しています。

2026年5月7日週次レポートの個別銘柄情報グラフィックレコード
個別銘柄情報:Good 2銘柄と観察銘柄の位置づけ
Good 「これは推す」という意思表示(毎週最大 2 銘柄)
観察 材料はあるが慎重に

テーマ①: 消費者向けクリプト本流化(TON)

これまでクリプトの主戦場は「投資家どうしの取引」でしたが、5 月は「一般消費者がアプリの一機能としてクリプトを使う」局面が一気に進みました。SNS・メッセンジャー・ネオバンクといった既存大手ユーザー基盤に、クリプト機能が裏側で組み込まれていく流れです。代表例が TON です。

1

Toncoin:TON

CMC ↗ Telegram 経済圏 L1(rank 17 / +96.9% 7d / $2.62)
Good
Telegram 本体が「最大運営者」になる構造転換、10 億人ユーザー基盤へ
TON(トンコイン)は、メッセンジャーアプリ Telegram と一体運用される Layer 1 ブロックチェーン(基盤チェーン)です。5月4日、Telegram 創業者 Pavel Durov(パベル・ドゥロフ)が、TON Foundation を Telegram 本体が置き換え、ネットワーク最大のバリデーター(取引承認サーバー)として正式に参加すると発表しました。同時に MTONGA(TON のロードマップ名)Step 3 として、ネットワーク手数料を 6 分の 1 に削減(1 取引あたり約 0.0005 ドル)する措置が動き出します。Telegram 経由の単日ステーキング流入額は 1.91 億ドル超で 4 ヶ月ぶりの規模に達し、英ネオバンク Revolut(ユーザー約 7,000 万人)でも TON エコシステムのメモコインが上場開始しました。
「Telegram のユーザー(世界 10 億人規模)がそのまま TON のユーザーになる」構造が、発表ベースから運用ベースへ移行した 1 週間と評価できます。手数料削減は決済・チップ・少額送金といった「日常の使い勝手」が問われる用途への投入を前提にした改定で、消費者向けクリプトが「投機の道具」から「メッセンジャーアプリの追加機能」へ移行する具体的な一歩です。投資家にとっては、TON が単なる L1 銘柄ではなく Telegram 経済圏の通貨インフラとして再評価される局面に入ったと整理できます。
注意点: +96.9% の急騰でテクニカル指標 RSI(買われすぎ・売られすぎを測る指標)は 84.3 と過熱圏に入っており、半値戻しのリスクは無視できません。Telegram 本体が最大バリデーターとなる構造は、長期的な「分散管理」という暗号資産の理念とは矛盾する面があり、規制当局の見方が変わる可能性も残ります。手数料 6 倍削減は利用拡大には追い風ですが、1 取引あたりの収益性はその分薄くなります。

テーマ②: L1 機関採用レール構築(SOL)

L1(基盤ブロックチェーン)の競争軸が、開発者数や手数料安さから「機関投資家・大企業がそのまま使える運用レール」へ移っています。J.P. Morgan、Anchorage、Western Union、Google Cloud といった伝統金融・大手クラウドが特定 L1 を選別し、自社サービスのバックエンドに据え始めた点が今週の特徴です。この潮流の中心にいるのが SOL です。

2

Solana:SOL

CMC ↗ 機関採用レール L1(rank 7 / +5.4% 7d / $88.31)
Good
三大機関が同週に「Solana を選ぶ」と表明、運用レール選びが Solana に収斂
Solana(ソラナ)は、高速処理が特徴の Layer 1 ブロックチェーンです。5月5日、Solana 上で起きた 3 件の機関提携が同日に重なりました。第一に、Solana Foundation と Google Cloud が決済プラットフォーム Pay.sh を共同発表し、AI Agent(自律的にタスク実行する AI)が Gemini や BigQuery などの Google クラウドサービスを Solana 上のステーブルコインで従量課金できる仕組みを公開。第二に、Anchorage Digital と J.P. Morgan が Solana 上のステーブルコイン流動性提携を発表。第三に、Western Union が独自ステーブルコイン USDPT を Solana 上で発行する計画を公表しました。
同日に同水準の発表が 3 件重なるのは偶然ではなく、機関の運用レール選びが Solana 寄りに収斂しつつある合図と読めます。さらに同じ 5/1 には SOL Validator Delegation Program(バリデーター=取引承認サーバーへの委任)の新基準が発効し、機関が安心してインフラに参加できる枠組みも整えられました。L1 競争はもはや TPS(毎秒取引件数)や手数料の優劣ではなく、「機関が社内ガバナンスを通せるか」という別軸に移っており、Solana はその軸で先頭に立ったと評価できる週でした。
注意点: Solana には過去複数回のネットワーク全停止履歴があり、機関運用レールとしての安定性は実績の蓄積待ちです。ミームコイン取引への依存度が高く、相場の薄い局面では収益が偏る構造も残ります。さらに rank 7 の時価総額規模では、TON のような短期 2 倍級の値動きは構造的に出にくい点も理解しておくべきです。

テーマ③: AI×プライバシー / AI×ストレージ / 分散クラウド(ICP・FIL・VVV)

AI と暗号資産の交差点で、3 つの異なる切り口が同時に立ち上がりました。「ユーザーのプライバシーを守る AI」(VVV)、「AI が生み出す大量データの保管庫」(FIL)、「中央クラウドに依存しない分散コンピューティング」(ICP)の 3 軸です。それぞれ性格は違いますが、AI ブームの恩恵が L1 通貨だけに留まらず、ユースケース特化銘柄に流れ始めた点で同じ潮流に属します。

3

Internet Computer:ICP

CMC ↗ 分散クラウド L1(rank 45 / +14.8% 7d / $2.89)
観察
5月10日 Cloud Engines デモ前の期待先行ラリー、実装段階は前進
Internet Computer(インターネット・コンピューター)は、中央集権的なクラウドサービス(AWS など)の代替を目指す分散型コンピューティング基盤です。5月4日、基盤ソフト GuestOS がリリースされ、Cloud Engine 用のサブネット(処理単位)追加とサブネット管理者機能が有効化されました。実装段階としては前進です。5月10日には DFINITY による Cloud Engines のデモが予定されており、これに対するアンティシペーション・ラリー(期待先行買い)が +14.8% の上昇要因となっています。分散クラウドという長期テーマの中で「ようやく見せられる段階に来た」というメッセージが市場に響いた格好です。
注意点: 5月10日のデモが期待外れに終わった場合、+14.8% の上昇分は短期で剥落するリスクがあります。DFINITY は過去 5 年間「言うだけで実装が後ろ倒し」のパターンを繰り返してきた経緯があり、ピークから 99.6% の下落を経験しています。今回も商用採用(有名企業が実際に Cloud Engines を本番運用する事例)はまだ確認できておらず、企業向け売上の積み上がりは 6〜12 ヶ月先行と見るのが現実的です。実装段階の前進は事実、ただし商用採用は未確認、という温度感を維持すべき局面です。
4

Filecoin:FIL

CMC ↗ 分散ストレージ(rank 65 / +20.6% 7d / $1.122)
観察
AI 時代のストレージ需要に「実装」で応答、5/6 にレンジブレイク
Filecoin(ファイルコイン)は、世界中のストレージ提供者にデータ保管を委託できる分散ストレージネットワークです。5月1日、運用ソフト Boost の v2.5.2-rc1(次のネットワークアップグレード NV28 対応のリリース候補版)が公式 GitHub で公開されました。あわせて5月7日には Glacier Drop と呼ばれる大規模配布キャンペーン(対象 3,360 万ウォレット規模)の冗長データを Filecoin 上に保存する運用が公式 SNS で発表されています。背景にはグローバルな AI ストレージ需要の急拡大があり、AI 関連ストレージ銘柄である SanDisk が月次 +94%、Micron も連動して上昇するなど、伝統市場側でも「AI 学習データの保管場所」を巡る再評価が進んでいます。Filecoin はその暗号資産側の代表格として 5/6 に 1.16 ドルのレンジブレイクを達成しました。
注意点: Boost v2.5.2 はあくまでリリース候補版(RC 版)であり、正式版稼働までに不具合発覚や後ろ倒しが入る可能性は残ります。Glacier Drop で Filecoin に保存される実データ量・ストレージ提供者側の収益・継続利用率はまだ開示されておらず、「保存契約はしたが短期で離脱」のシナリオも排除できません。10 月にはトークンの大規模ロック解除(ベスティングクリフ)が控えており、供給オーバーハング(売り圧の重し)も意識すべきです。
5

Venice AI:VVV

CMC ↗ AI×プライバシー(rank 83 / +36.5% 7d / $11.30)
観察
emissions cut(発行量削減)が「予告」から「正式発効」へ、買い戻しと同時作動
Venice AI(ヴェニス AI)は、ユーザーのプライバシーを保護する設計を組み込んだ AI サービスのトークンです。3 月 26 日に予告されていた新規発行量(emissions)削減が、5 月 1 日に正式発効しました。年間発行ペースが 600 万→500 万へ下がり、6/1 には 400 万、7/1 には 300 万へ段階的に縮小する設計です。これに先立ち 4/27 にはサブスク収益による焼却(burn)プログラムが倍増され、Pro 月 2 ドル / Pro+ 月 5 ドル / Max 月 10 ドル相当の VVV 買い戻し(buyback)が走り始めています。発行減と焼却増が同時に作動する設計で、5/6 には +21% のラリー、CoinGecko トレンド 11 位、SNS 言及量が一時 BTC・XRP を上回る場面も見られました。
注意点: 時価総額 5.18 億ドル / rank 83 のミッドキャップ銘柄であり、値動きの振れ幅は L1 通貨の比ではありません。買い戻し原資はサブスク収益に依存するため、ユーザー数の伸びが鈍れば焼却量も縮小します。公式ヘルプページの更新は 2 月時点で止まっている可能性があり、最新情報は公式 X アカウントの発信を一次ソースとして確認する運用が必要です。

テーマ④: プライバシーセクター回転(DASH)

規制と地政学の不透明感が同居する局面では、保有を秘匿できるプライバシートークンへの避難買いが歴史的に増える傾向があります。ZEC をはじめ同セクター全体が物色される中、DASH もこの流れに乗りました。ただし価格上昇を後押しした「材料」については公式情報と整合しないため、観察対象として位置づけます。

6

Dash:DASH

CMC ↗ プライバシー資産(rank 73 / +49.6% 7d / $50.12)
観察
プライバシー領域のトレンドに乗った急騰、ただし後押し材料は公式情報と矛盾
DASH(ダッシュ)はプライバシー特化型の暗号資産(送金内容を秘匿できる仕組み)です。今週は7日間で +49% 程度の急騰を記録しました。なぜプライバシーセクターが今注目されるかというと、米議会の CLARITY 法案など規制議論が進展する一方、中東情勢の長期化で地政学的不透明性が高止まり、「規制の不確実性 × 国家リスク」が同居する局面に入ったためです。こうした局面では保有を秘匿できるプライバシートークンへの避難買いが増える傾向があり、ZEC など同セクターの上昇に DASH も乗った形です。
ただし今回の上昇には、二次メディアが一部取り上げた「Evolution mainnet 5月2日稼働」「Western Union が DASH を買収」といった報道が背景にあります。前者は DASH 公式ロードマップ(2027年予定)と整合せず、後者は Singtel 系列の電子ウォレット事業を指して暗号資産 DASH とは別事業のため、いずれも話題にはなっているが事実ではないものです。プライバシー領域のトレンドとともに話題化した銘柄として捉え、今週は推奨ではなく観察対象に留めます。
注意点: +49.6% は本レポートのポンプ閾値 +50% 目前であり、先物出来高 6 億ドル / 現物 1.17 億ドルの 5 倍超という比率は健全な値動きとは言えません。短期(1〜2 週間)で値動きの巻き戻しを確認すべき局面です。
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マーケットカレンダー

今後に控える、市場価格に影響しうる主な予定を時系列でまとめました。とくに 5/9 米CPI5/15 Powell 議長退任 の 2 点が、今週マクロ要因で振らされた相場を次にどう動かすかを左右します。

5/9(金)米国 消費者物価指数(CPI、物価上昇率を測る指標)4 月分。3 月 3.3%(うちエネルギー +12.5%)からの再加速を市場が織り込めるかが焦点。中東緊迫で原油 Brent が一時 110 ドル超のため、ヘッドライン CPI が再び上振れすると、6 月 FOMC での利下げ期待が後退する。
5/10(土)DFINITY Cloud Engines デモ(ICP 5 周年記念)。「AWS の代替を本当に名乗れるか」の評価軸イベント。期待先行で 5/8 にかけて買われやすい一方、デモが地味だと出尽くし反応のリスクも。
5/4〜5/11WLD トークン線形配布(37.23M WLD)。約 9.7M ドル相当の売り圧が日割りで出続ける構造。WLD の戻り売り材料として継続留意。
5/11 週CLARITY 法案 上院銀行委員会マークアップ(修正審議)。公式の審議カレンダーには未掲載。Tim Scott 委員長の「希望日程」段階で流動的。実際に審議入りすれば暗号資産規制の枠組みが大きく前進。
5/15(木)Powell 米FRB議長 任期満了 → Warsh 新議長へ。Warsh 氏は Powell より「インフレ警戒寄り」と見られており、初の発言タイミングで市場が金利見通しを織り直す可能性。
5 月後半HYPE 現物 ETF(THYP)の S-1 修正書類進展。SEC(米証券取引委員会)からの追加質問への回答進捗が継続観察ポイント。
5/21(水)メモリアルデー連休前、米上院の休会入り。CLARITY 法案が休会前に動かないと、次の窓は 6 月になる。
5 月内SOL 現物+ステーキング ETF ローンチの可能性。米政府機関の正常化を受け、SEC 承認案件の処理再開が進めば、月内の上場可能性が残る。
5 月内FET の ASI:Chain 開発ネット指標更新。統合進捗が見える形で示されれば、FET / OCEAN / AGIX 統合の評価材料。
6 月暫定Ethereum「Glamsterdam」アップグレード目標。開発スケジュールは後ずれ気味。ETH の中期評価には影響するが、今週の値動き要因ではない。

5/9 米 CPI :何が出たら何が起きるか

来週から再来週にかけての最大のイベントは、5/9 の米国 CPI と 5/15 の Powell 議長退任です。CPI 3.5% 以上(上振れ)なら利下げ期待後退・ドル高で暗号資産は短期で売り、3.3〜3.4%(中央値)なら相場は動きにくく材料待ち、3.2% 以下(下振れ)なら 6 月利下げ期待が再点火し暗号資産は買われやすい構図です。中東情勢でエネルギー価格が上振れているため、ヘッドラインは強めに出やすい構造ですが、コア(食品・エネルギーを除く部分)が落ち着いていれば、市場は「一時的」と読んで反応を抑える可能性もあります。

08

編集部の視点

マクロから個別銘柄、来週の節目まで、今週の市場の読み方を一つの流れでまとめます。

今週は、「ヘッドラインに振られた価格と、静かに前進した構造」が同居した週でした。前半は中東情勢の長期化と FOMC 据え置きで「higher for longer(高金利長期化)」の警戒が広がり、後半は 5/6 の米イラン停戦覚書接近報道で一時的なリスクオンに切り替わるという、性格が途中で入れ替わる地合いでした。

ただし価格の表面的な動きとは別に、構造材料は同時並行で前進しました。米国現物 BTC ETF への 4 日連続流入(合計 +16.5 億ドル)、ETH ETF の 5/4 単日 +7.37 億ドルでの大反転、米議会の CLARITY 法案 Section 404 妥協案の最終化、欧州金融機関のステーブル準備(Bullish×Equiniti、イタリア銀行 SEPA トークン化、バンコ・サバデル Qivalis)が同じ週に重なっています。「価格は動かなくても土台は厚くなる」という地味な週ほど、後から振り返ると転換点だったということが過去にもありました。

この構造前進を最も強く受け止めたのが、今週 Good を付けた TON と SOL の 2 銘柄です。TON は Durov 兄弟が運営権を Telegram 本体に再統合し、10 億人ユーザー基盤からの自動接続が「発表ベース」から「運用ベース」へ移行しました。SOL は Western Union(USDPT)、Anchorage × JP モルガン、Google Cloud Pay.sh の 3 件が同日に発表され、機関の運用レール選びが Solana に収斂する象徴的な一日となりました。観察対象とした ICP・FIL・VVV の 3 銘柄も、「ブロックチェーンで AWS の代替」(ICP)、「AI ストレージ需要への実装応答」(FIL)、「AI プライバシー × 供給設計の同時作動」(VVV)と、AI と暗号資産の交差点でユースケース特化型の動きが立ち上がってきています。さらに DASH は規制・地政学の不透明感を背景にプライバシー領域全体が物色される流れに乗って +49% 急騰しましたが、上昇材料は二次メディア発で公式情報と整合せず、観察対象に留めています。Good を 2 銘柄に絞ったのは、テーマの広がりは観察対象で確保しつつ、「これは推す」の意思表示を絞ることで本命を読者に伝えやすくする狙いです。

来週からは、5/9 の米 CPI と 5/15 の Powell 議長退任 → Warsh 体制移行が 5 月の方向を決める転轍機になります。CPI が下振れれば 6 月 FOMC の利下げパスが再生し ETH ETF の戻しと L1 機関採用テーマ(SOL)の再加速余地、上振れれば「BTC 偏重・選別相場」継続で Good 銘柄が相対優位を保つ形です。さらに 5/10 の DFINITY Cloud Engines デモは ICP の +14.8% 期待先行ラリーが「実装の答え合わせ」を迎える節目になります。5 月は「マクロに拘束された選別相場の前半」と「触媒(CPI / Powell 交代 / CLARITY 審議)が動く後半」に分かれると見ておくのが現実的です。

参考資料

使用データ:CoinMarketCap API, etc.

数値基準時刻: 2026-05-07 朝 / 当日レート: 1 ドル ≒ 157.76 円(円換算が必要な箇所に適用)

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